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育て!神戸のエンジニア 進出企業ビジティングレクチャー (株)メンバーズエッジ × 神戸高専

育て!神戸のエンジニア 進出企業ビジティングレクチャー (株)メンバーズエッジ × 神戸高専

エンジニアの仕事を肌で感じて夢と可能性を広げてほしい。

2019.02.20

2018年10月に神戸オフイスを開設したITエンジニア集団、株式会社メンバーズエッジ。その豊富な経験と専門知識を生かした特別講義が、2019年1月17日、神戸市立工業高等専門学校で行われた。趣旨は神戸で学ぶITエンジニアの卵たちに仕事の醍醐味を知ってもらい、自らの学びにつなげてもらおうというもので、同社スタッフを講師に電子工学科4年生が受講。エンジニアにとって大切な基礎についてのお話や、実践的なプログラミングのワークショップを、第一線の現場のリアルな視点で進行した80分間。通常の授業とはひと味違った内容に、受講生は熱心に聞き入り取り組んだ。

講師:(株)メンバーズエッジ Webエンジニア
メイン講師 山本真義(やまもとまさよし)氏(マネージャー) 写真中央
アシスタント講師 山口賢二(やまぐちよしつぐ)氏 写真左
アシスタント講師 服部宏次(はっとりひろつぐ)氏 写真右

 

エンジニアに大切な基礎力が
将来の仕事と人生にきっと役立つ。

 

講義当日、講師の3氏が、全75ページにも及ぶパワーポイントのデータを携えてやって来ました。その資料はこの日のために作成されたもので、高専の学生さんに照準を合わせたオリジナル版。メインの講師を務める山本氏は事前の心境をこう語りました。「私自身は社内で新卒者の指導を担当したり、会社説明会にも参加していますので、テーマやレベルについては理解していました。問題はそれを80分間に収められるかどうかでしたね」。

 3氏が勤務する(株)メンバーズエッジとは、国内大手企業のWebマーケティング支援を行う(株)メンバーズのグループ企業。Webサービスを運営する事業会社の開発支援を業務としており、3氏とも第一線で活躍する現役エンジニアです。

 そしていよいよ講義の始まり。受講生が続々と入室し着席した後、講師による自己紹介が行われ、本題に。プロジェクターに映し出されたのは「エンジニアに大切なこと」の文字。至ってシンプルなテーマですが、ここから山本氏が現場の視点でエンジニアのトビラを次々に開いていきました。

 まず、「技術を知り、それを扱えることは大切か?」と疑問を投げかけ、「新しい技術を知っている、を支える技術が大切」と結びました。つまり、最新の技術を使いこなせることを見えない部分で支える基礎の重要性を示したわけです。

 そして、そのために特に重要なポイントとして「量と質、そして道具」を挙げ、それこそがエンジニアの基礎力であるとして、それぞれを具体的に説明。「量」はタイピングスピードが担う。速く打つことで試行量が増やせて時間も短縮でき、「力になる」。「質」は良いプログラムを書くことであり、それによってバグが起きにくく時間に余裕ができて「力になる」。「道具」はマウス・キーボード・パソコンで、できる限り最善の道具を選ぶことで「力を最大化する」。山本氏は、これらがエンジニアとして理想像にたどりつくために大切な基礎だとしました。

 さらに、この基礎がなぜ仕事に必要か、山本氏は実践に即して語りました。「仕事ではあなたのスキル以上の力が求められます。そして基本的に前例はありません。すでにあるのなら作りませんからね。つまり不確実性への対処、トライ・アンド・エラーの連続なのです。そこで差をつけるのが基礎である『質・量・道具』。成果として見えるのは氷山のように水面上のほんの少しの変化かもしれません。だけど、その少しの変化があなたと誰かの信頼を作り、チャレンジングな仕事を舞い込ませ、あなたの仕事、ひいては人生を輝かせてくれるでしょう」。

▲エンジニアにとって大切な基礎力について熱く講じる山本氏。

 

実践に即したプログラミングを体験し、
そこから真に大切なことを学ぶ。

 

 後半では、実践編としてワークショップが行われました。題して「即席プログラミング選手権」。山本氏が「今からあるプログラムを書いてもらいます」と声を発したとたん、室内の空気が一変。受講生はさっと机上のパソコンに向かい、一斉にキーボードを叩き始めました。この様子に山本氏は確かな手応えを感じたそうです。「皆さん『待ってました』とばかりにエディタを開いてプログラムを書き始めましたね。やる気は十分だし、ベースもしっかりと持っていることがわかりました」。

課題はこのようなもの。

 これは前述の量・質・道具のうち、量を競ってもらおうというもの。メンバーズエッジでは、社内で技術系スキルの試験を行う場合によく用いるものだそうで、カレンダーの決まりごとや月の大小、うるう年など、誰もがほどよく仕様を把握しているところがポイント。しかし、うるう年は厳密には例外があるなど一般には微妙に知られていないこともあり、処理を整理しないと見づらくなるという絶妙なテーマなのだとか。山本氏がこの課題を選んだ理由はそこにありました。「われわれが受注する場合、お客さまのシステムについては2割しか知らず8割は未知というのが常です。結局は知っている2割で知らない8割に対応できるかどうかが勝負。この課題はその局面につながるもので、難易度は下げていますが、根本的な動きや考え方は同じです」。

 制限時間の30分間、皆さん一心不乱に取り組みましたが、誰も完成に至ることはできませんでした。しかし、背後から作業を見て回っていたアシスタント講師の山口氏は、熱意をひしひしと感じたそうです。「皆さんすごく個性豊かですね。それぞれよく考えて、自分なりの方法で取り組んでいました。早々にロジックを書いている人もいれば、うるう年の例外を細かく洗い出している人がいたり。進み方には差はありますが、感じる熱量は素晴らしかったです。自分にもこんな時期もあったなと、2年前を思い出してしまいました」。

 ワークショップは、さらにコードレビューへと続きました。コードレビューとは、ある人が書いたコードを他の人が確認し、品質や一貫性を担保しようという作業で、実際の業務でも行われています。ここではグループ単位になって、実装者が自らのプログラミングの流れを説明し、他のメンバーがそれに指摘をするというルールで行われました。熱弁する実装者、真剣に耳を傾け、意見を述べるメンバー。先ほどのプログラミング選手権とは打って変わって、演習室内に熱い議論が飛び交いました。

 20分間の予定時間終了後、山本氏が総括しました。「コードレビューは、結局はチームの『決め』次第です。実際の業務では、複数のスタッフで1つのサイトやシステムを作り上げていくので、この『決め』がなければ統一感をもった一つのシステムになりません。さらに、ある人が作ったものを別の人がメンテナンスしたり修正したりするので、後々のためにも大切です」。

講義を終えて、それぞれの感想、
そしてこれから。

 

 今回の特別講義は、受講生にとって、見て、聞いて、書いて、話して、想像してという、持てる力を出し切るようなダイナミックな講義となりました。受講後の感想を聞くと、以下のような声が返ってきました。

 「コードを組んでいく道すじやインデントの重要性、コードが決まってしまう空白の使い方など、現場で大切なポイントを知ることができました」。

 「いつもは時間に余裕がある中で確認しながらプログラムを書いていましたが、今日は時間が制限された切羽詰まった状況だったので、ほとんど確認もできませんでした。そういう実践的な課題に取り組めたのは、すごくいい体験でした」

 「冒頭の量と質と道具のお話が印象的でした。そもそも量と質は両立しないと考えていましたが、量はタイピングスピード、質は良いプログラムを書くことでそれが可能となることが学べました」

 山本氏は最後にこう語ってくれました。「学生の皆さんはエンジニアについて、新技術や楽しい世界のことをよく聞いていると思いますが、それとは違った内容にするのが本日の狙いでした。例えば量と質と道具の話などとても基本的なことですが、学校で教わったり仕事で気付いたりする機会があまりなく、それを伝えることが必要だと考えたのです」。

▲ワークショップで「プログラミング選手権」に真剣に挑む受講生たち。

 IT企業・スタートアップの集積に力を入れる神戸には、魅力的で個性的な企業がどんどん増えています。神戸高専では、昨年からそんなイマドキのIT企業による、電子工学科での特別講義を実施しはじめました。エンジニアが足りないといわれる時代で、この特別講義がめざすものは、IT産業を支えるエンジニアが地域に育つ土壌を育むこと。今回の(株)メンバーズエッジによるユニークな講義はまた、そのための確かな一歩となりました。

 

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