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注目スタートアップ「ACALL株式会社」CTO 藤原弘行さん講義@明石高専

注目スタートアップ「ACALL株式会社」CTO 藤原弘行さん講義@明石高専

技術者の後輩たちへ「仕事を面白くするのは自分次第」

2020.03.02

神戸のスタートアップで今、最も注目を集めている企業のひとつが「ACALL(アコール)」です。

2018年に発行された週刊東洋経済の2018年度版 すごいベンチャー100」にも選出された企業で、アプリやIoTなどでスマートオフィスを実現するサービスを提供しています。

そのACALLで最高技術責任者(CTO)を務める藤原弘行さんが、明石工業高等専門学校(明石市)で講演しました。

テクノロジーにより変革する社会、働き方改革、そして、求められる人材、必要とされる能力など、技術者の先輩として、企業の経営層として、人柄を表すようなソフトな口調で語りかけると、学生たちはじっくりと聞き入っていました。

ーー 神戸で注目のスタートアップ

ACALLは、2010年10月に創業しました。オフィスの受付機能をアプリが代わって行うサービスや、会議室にタブレットを置き、会議を効率的に回すサービスなどを展開しています。

また、神戸市職員とスタートップが協働で地域課題や行政課題の解決に取り組む「アーバンイノベーション神戸(UIK)」事業では、2018年上期に参加し、区役所の窓口業務をタブレットで代行するサービス「ACALL FRONT」の導入につながりました。

 

「ACALL FRONT」のサンプル画面

ーー すべては自分の役に立つ。何事にも全力で

ACALLの創業メンバーだった藤原さん。

大学時代は文系(国際系)で、ウエイターやバーテンダー、光ファイバー工事のサポート、パソコン教室の先生など、アルバイトでいろんな職種を経験したそうです。

「技術系ではない学問を勉強して、生きていく上で役に立つのだろうか」と疑問に感じていた折、出合ったのがWEBサイトの制作でした。
これが人生の転機となりました。

「自分の作ったWEBサイトが、学校や世界中の人に見てもらえる。なんて面白いんだ」

藤原さんにとっては、1人でできる仕事という面でも魅力的だったそうです。「やってみたい」。そう思い、IT、フリーエンジニアへの道を進むことになります。直後に、面白くないと感じていた大学は、退学してしまったそうです。

様々なアルバイトを経験し、ITの道へと進んだ藤原さん。家庭教師の仕事では、話をするコツ、ポイント、緊張しないメンタルを学ぶなど、すべての経験、仕事が今の自分を作り上げたといいます。

「目の前の道が、理想じゃないと思う時もある。それは、自分が置かれている立場、自分の選択の結果だということ。誰かのせいにすれば、面白くなくなる。目の前のことに全力で取り組む。決してふてくされてはいけない。全力でやっていれば必ず道は開けてくる。お客さんや、ほかの誰かが見てくれている。すべての経験が役に立つ

藤原さんの話す言葉にも、自然と力がこもります。

ーー 諦めず何度もチャレンジすることが重要

ACALLは10年前の2010年10月、大阪・南森町の小さなマンションの1室からスタートしました。長沼斉寿社長とたった2人での船出。明日の仕事をどうやって取るか、そんな綱渡りの日々

成功をつかんだ秘訣、それは「諦めないこと」だったと強調しました。

取引先の信用を失いかけた時、社長が粘り強く交渉し、次の仕事を取ってきたといいます。

現在アドバイザーを務めるシリコンバレーの投資家とは、何度もやりとりし、信頼関係を構築したそうです。

「しつこいだけではだめ。ダメなら次のプランを出すようなことをしないと。技術的に1回失敗しても、次の案を出す。諦めない姿勢を大事にしてほしい

ーー 世界を変える技術とサービス

今、世の中は第4次産業革命の最中にあるといわれます。コンピューターの進化により自動化が進んだ第3次産業革命に続き、第4次は、モノとネットをつなぐIoTやAI(人工知能)、ビッグデータなどをキーワードに、自立化、最適化が進む社会です。会社の受付や、老人ホームでお年寄りとおしゃべりするなど、AIの応用が進んでいます。

そのIoTを駆使しながらサービス展開するACALL。藤原さんは「技術で世界の姿は変わる。最先端の技術をキャッチする姿勢が大切です」と説きました。

「最新のトレンドをキャッチするなど、世の中の流れを意識して欲しい」
「変化に対応するものだけが生き残る」
「知識を組み合わせて初めてアイデアが出る。アイデアで世の中を変えてほしい」

最先端の現場で働く技術者からのメッセージに、学生たちは圧倒されていくようでした。

ーー 必要なのは、情報技術と信頼関係だ

今、働き方がどんどん変わっています。ワークライフバランス、つまり、仕事と私生活のバランスをとる重要性が叫ばれます。かつては、深夜まで残業し終電で帰宅することが評価され、美徳とされてきました。残業時間が頑張りの指標の一つであった時代です。

しかし、時代は変化しました。残業しない分、仕事を時間内に終わらせないといけません。

仕事のスタイル、服装などもどんどん変わる。ACALLも当初はスーツだったようですが、途中、多くのIT企業のように、Tシャツなどカジュアルな服装に変更したそうです。リモートワークが可能になり、カフェでリラックスしながら仕事することも認められています。

「会社に行く必要はない。その場にいなくてもチームプレーができる。いろんな働き方が受け入れられる時代になった。リモートワークで、どこにいても働ける。必要なのは、情報技術と信頼関係だ

ーー 時代が求める人材、スキルとは

時代が求める人材について、また、今後必要とされるスキルについても、企業をマネジメントする立場から紹介しました。
まずは「コニュニケーション力」
「しゃべりが上手いかどうかではない。聞く力が必要。みんな人の話を聞かないものだ。人の話を聞けることと、自分の言葉で的確に話すことが大切」。

さらには「英語」
「自分が入手できる情報量が何倍にもなる。ITに限らず、技術を仕事として扱う人にはとても重要」

次に「数学」
「数学的なものの考え方、論理的思考は不可欠」

最後に「好奇心」
「ものに興味がなくなると終わる。1年ごとに世界が変わる、新しい技術が出る。面倒臭いと思うと成長は止まる。知りたいと進むことが重要」

学生たちは、静かに一つ一つの言葉に耳を傾けていました。

ーー 自分の市場価値は?  仕事を面白くするのは自分

講演の最後、藤原さんは、こう呼びかけました。

自分の市場価値を意識すると、ものの見方が変わる。世の中に出て仕事をして、どんな価値を提供できるか、どんな風に評価されるか。相手の目線に立って考えてほしい。相手の立場からどう見えるか。自分の価値、足りないものを意識すると変わってくる」

「仕事だけが人生ではないが、仕事は、換算すると人生の結構な量を占める。面白くないと、すごくもったいない。面白くなるためにはどうすれば良いかを考えて欲しい

例えば、ACALLのオフィスでは、中央が棚で区切られており、疎外感がありました。まるで、二つのオフィスのように。そこで、区切りを取り払い、レイアウトをかえると、一体感が生まれたそうです。

小さな工夫を重ねていくことで、働き方、勉強もそうだが、面白くなっていく。楽しく働いてほしい。日本の課題でもある生産性も向上するはずだ。インターン、アルバイト、就活。どんな取り組みでも、自分がどんな取り組みができるだろうかと考えみるだけで面白くなる

ーー 野望は周りに話せ。有言実行だ

講演後、学生たちとの質疑応答がありました。

学生「文系出身者だが、どのように技術を学びましたか」
藤原さん「基本、独学でやった。たくさん本を読み、実践しながら覚えた。ただ、専門家から学んだ方が、上達の近道でしょう」

学生「どのタイミングで起業しようと考えたのですか」
藤原さん「社長は大学のゼミでベンチャー企業を研究し、最初から起業するつもりだった。大学卒業後、民間企業で営業職として数年間働いた後、起業した。一方、僕は営業が苦手で、フリーの技術者として、知人らから紹介を受けた仕事をしていた。そんな2人が共通の知人の紹介で出会った。社長が構想を描いて、僕がつくる。足りないものを補い合う関係がうまく機能した」

「(夢や目標、やりたいことを)人にいうと、自分にプレッシャーをかけられるし、だれかが手伝ってくれる。野望は(心の中に)閉じ込めずに、話してしまう方がおもしろい

技術者として、企業の役員として、人生の先輩として、藤原さんの言葉は、それぞれが体験に裏付けされ、説得力ある言葉でした。これから社会に出る学生たちにとっては、指針となったようでした。

【ACALL株式会社】
設立:    2010年
代表取締役: 長沼斉寿
取締役:   藤原弘行
事業内容:  スマートオフィスプラットフォーム「ACALL(アコール)」の開発および販売
所在地:
■神戸本社
〒650-0033 兵庫県神戸市中央区江戸町104 2F
■東京オフィス
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂 1-16-6 二葉ビル2階
https://corp.acall.jp/company/about/

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