インタビュー

トップページ > インタビュー > 六甲バター株式会社

六甲バター株式会社

六甲バター株式会社

創業地の神戸に新工場が誕生
地域に根ざした企業を目指す

2020.07.20

六甲バター株式会社代表取締役社長三宅 宏和 氏

神戸テクノ・ロジスティックパーク(産業用地)

世界初のスティックチーズが人気を博し、個包装スライスチーズを国内で初めて製造販売するなど、常に業界をリードしてきた六甲バター株式会社。新しく神戸工場が誕生し、2019年春から稼働を始めています。代表取締役社長 三宅宏和氏が見つめる今と未来について聞きました。

三宅 宏和 氏

神戸で産声を上げ、国内トップブランドへ

当社は1948年に創業し、日本のプロセスチーズのパイオニアとして走り続けてきました。世界各国や国内から厳選した原料チーズを使用し、約300種類を製造。家庭用プロセスチーズでは国内トップシェアを誇っています。主力商品は1年間で2億本以上を出荷する「ベビーチーズ」を筆頭に、さまざまな食卓シーンを彩る「スライスチーズ」、クリームチーズをたっぷり使った「チーズデザート6P」などがあります。

六甲バターはチーズメーカーとして知られていますが、創業当時は農林省(現 農林水産省)指定のマーガリンを製造し、学校給食に供給していました。社名にバターを冠しているものの、実は一度もバターをつくったことはありません。マーガリンはその昔、人造バターとも呼ばれ、植物性油脂を原料としています。始まりの地である六甲山の麓で、いつか牛乳からバターをつくりたいという創業者 塚本信男の強い思いが社名には込められています。

プロセスチーズの生産を始めたのは1958年。プロセスチーズとはナチュラルチーズを加熱殺菌し溶かして乳化させたもので、長期保存ができ、安定した味や風味が特長です。自社ブランドである「Q・B・Bチーズ」の販売を開始してからも、我々は創業者の思いを受け継ぎ、大事にしてきました。時を経ても、彼の製造開発に対する情熱が企業の根底に流れています。

神戸工場は食品の安全と働きやすさを重視

神戸工場は神戸テクノ・ロジスティックパーク(神戸複合産業団地)にあります。広大な土地の中にインターチェンジを包含し、食品の製造や物流には最適の場所です。私が気に入っているのは、ロケーションの良さ。社員食堂や見学棟の窓からは木々の緑が広がり、清々しさがあります。敷地内には従業員たちがひと息つけるベンチを置いたり小さな水辺をつくったりして、自然に癒やされゆったり仕事ができる環境を整えました。

設備面も充実しており、最新鋭のシステムを導入しています。工場内のスムーズな動線を確保するために、念願だった一体型のプラントを建設。原料が運ばれ、製品となって出荷されるまでをしっかり管理できるようトレーサビリティを強化しました。また、ゾーニングにより衛生管理を徹底し、従業員の行動はICチップで管理するなど、食品の安全性に配慮しています。

神戸市の手厚い補助が工場新設の後押しに

神戸工場を新設するにあたり候補地がいくつかあった中で、神戸市企業誘致担当の方が強く勧めてくださったのが神戸テクノ・ロジスティックパークでした。最初にお話をいただいた時は、そんなに高い土地を買うことはできないとお断りしたんです。けれども、年々生産量が伸び、基幹施設である稲美工場が手狭になってきたことに加え、設備や環境も時代にそぐわなくなってきました。建物の老朽化も深刻になり、建て直しを考え始めたころに、また神戸市企業誘致担当の方が声をかけてくださいました。塚本哲夫会長と一緒に土地を見学に行ったところ、なかなかいい場所じゃないかと一気に気持ちが傾いてしまって。食品メーカーとしての将来をしっかり見据えるならば、建て直しではなく新設を検討しようということになったのです。

一方で我々は、本社を置く神戸に腰を据えてやっていきたいという気持ちをずっと持ち続けていました。稲美工場の従業員には変わらず新しい工場でも働いてもらうことを前提としていましたし、通勤のことも考えると、新設する場所は阪神間以外に考えられません。やはりテクノ・ロジスティックパークしかないと思いました。とはいえ、最新設備の導入も含めた総額を実際に試算してみるとかなりの金額。熟慮したうえで最終的に決断できたのは、神戸市の企業誘致における補助制度の手厚さにあります。工場新設のための補助金、新規事業への援助金に加え、住民票を神戸市へ移す従業員に対しては転居に伴う補助金までサポートしていただきました。期待を上回る支援を得られたおかげで神戸工場が現実のものとなり、心から感謝しています。

東南アジアへのさらなる市場拡大が目標

神戸工場は、当社が未来に向けて発展していくために間違いなく必要でした。従業員用の駐車場を整備しても余裕のある広い敷地を確保できたので、将来的に増産しなければならなくなったときも、プラントの増設に十分対応できるでしょう。私はプロセスチーズの市場にはもう少し伸び代があると見込んでいます。市場拡大の地として注目しているのが東南アジア。「チーズデザート6P」はすでに輸出しており、日本製の食品は味と品質に信頼があると人気を集めています。諸外国ではナチュラルチーズが一般的で、プロセスチーズはまだまだ馴染みが薄い食品。一方、日本ではプロセスチーズの方が主流です。ゆえに、プロセスチーズの生産力や技術力は、日本が世界一と言えるかもしれません。神戸のインフラ力を借りて、当社の味をもっと東南アジアに発信していきたいと考えています。

また国内に目を向けると、健康食ブームが長く続いています。栄養豊富な乳製品は健康志向な人たちから脚光を浴び、バラエティ豊かな味が楽しめるプロセスチーズへのニーズはさらに高まるだろうと期待しています。けれども、時代の流れにあぐらをかかず、味の開発や食べ方の提案といった企業努力を引き続き重ねていかなければなりません。

今後も神戸を愛し、地域に愛される企業へ

神戸で生まれても、いつしか東京に本社を移す会社も少なからずありますが、私たちはずっと地元を愛してきました。交通の便が良く、自然は豊か。おいしいものもたくさんあります。良い仕事をしていくためにはやはり環境が大事。その点では神戸ほど街のイメージが良いところはないんじゃないかと思います。今のままで申し分はないのですが、一つ要望を言わせていただくなら、何か観光の目玉があるといいかもしれません。家族連れが1泊2日でゆっくりと遊べるような一大観光エリアを六甲山につくるとか。なんて、贅沢な話ですね(笑)。

六甲バターが神戸に根ざした企業でありたいという気持ちは、これからも変わることはありません。地域のみなさんと連携しながら、神戸の発展に寄与できる会社を目指していきます。

六甲バター株式会社の方々と神戸市担当職員
六甲バター株式会社

六甲バター株式会社

設立 昭和23年
主要な事業内容 チーズ等の製造販売、ナッツ等の食品の販売及びチョコレートの輸入販売
所在地
■本社/〒651-0062 神戸市中央区坂口通一丁目3番13号

URL  http://www.qbb.co.jp/

インタビュー一覧を見る